田雜先生は以前から非常勤で講義を担当されており、「ジブリ映画の話をする、めっちゃ面白い講座」と評判でした。2025年度より常葉大学 造形学部に専任教員として着任されましたので、改めて田雜先生の核心に迫るべく、お話をお聞きしました。中編は「田雜先生の授業内容」です。
(2025年度 常葉大学 造形学部 田雜先生 × 2年生 Iさん・Sさん・Tさん)
インタビュー実施日: 2025年4月23日(水) at 常葉大学 瀬名キャンパス
教員になったのは村井先生の推薦
【Iさん】
教員にはどうしてなられたのですか?
【田雜先生】
僕ね、ご存知かもしれないけど、『静岡時代』っていう静岡県内の大学生が作っているフリーペーパーがあります。僕、様々な縁から、あそこの原稿を読んでいるんですよ。原稿を読んでいて、編集指導みたいなことをすることになって、もう長くやっているわけです。
そのなかである時、村井先生が見学に来たのですよ。そのときに村井先生をひどい目に合わせてしまった記憶があるですけど(笑)。で、「非常勤講師に推薦してもいいですか」って。僕もそれは面白そうだなと思ったんです。
僕は映像・映画を作るときって、かなり理屈で作るわけ。お話を作ったり表現したりすることに対して、結構自分なりの理論はあるつもりで。それを使って『静岡時代』の学生たちに「こういう風に作ればこうなる」みたいなことを言って、それなりにうまくいっていたわけですよ。学校でもなんでもないけど、そういう狭いところで教育って言っていいのかな、ちょっとしたゼミみたいな。私設のゼミみたいなものを回してうまくいっていたから、「俺全然やれるんちゃう」って。せっかくだから腕試しみたいな感じで来たんです。というだけです(笑)。
【Iさん】
そうしたら大人気(笑)
【田雜先生】
やっぱり、なんか人気でた(笑)。大人気だった(笑)。
「研究者の視点」と「制作者の視点」
【Sさん】
教えるうえで気をつけていることはありますか?
【田雜先生】
教えることで気をつけていること? 僕が専任になって今週で2週間なのですけど、分かったことは僕は学術研究者ではないので、研究者じみたことは言わないということです。僕は制作者なんで、研究者や評論家っぽいことは言わない。これは『らーめん才遊記』でも言っていたんで間違いないと思うのですけど、違うんですよ。やっぱり、「観察する人の目線」と「作る人の目線」は違う。
だから僕はみなさんに教えるって言ったら不遜な感じもするけど、あれは一緒に作っているんですよ。だから一緒に作るときの作り方を、ちょっとこうやって。「お母さんと一緒にキッチンで、初めてケーキを作りましょう」とかとあまり変わらないです。あのとき、お母さんも一緒に作っているじゃないですか。あれに近いと。それを一応言語化して、「これはこういう風になっているから、ここまでの情報でこうせいよ」とかって細かく言っているだけで、一緒に作っている。それ以上のことをやると何かおかしくなる。かな? 僕は研究者ではない。
【Sさん】
そこに違いが? (笑)
【田雜先生】
いや、研究者はすごいですよ。研究者は、僕は本当に尊敬していて、ああはなれないって思うし。で、ちょっと違うんだよね。「研究」は事実を積み上げていくものなので、真ん中に事実があるわけですよ。だけど、僕らみたいな「制作」って、真ん中に事実があるわけじゃない。むしろ嘘・虚構がある。ファクトが中心にあるに対して、僕らフィクションがあるような人間なので。制作者はそのフィクションによって、作っている人間とか受け手を何がしか変化させる過程に「楽しみ」がある。だから、なんか違うんだよって思っています。
僕に学者っぽいこと聞いてもすごい頭の悪いことしか返ってこないんで(笑)。
僕がうっかり学者っぽいことを言い出したら、「ちょっと学者っぽいこと言って、かっこつけてませんか」って批判してください(笑)。違うんですよ。
田雜先生は「全体的に不審」 !?
【Iさん】
たまたまこの間見かけただけなんですけど。Sさんの髪の毛の色が…
【田雜先生】
あぁ紫だねっ
【Iさん】
すごい見てるなぁ、と。
【田雜先生】
すげぇ紫だったからね。見るって、あれだけ紫だったら(笑)。久しぶりだったから、めっちゃ紫だぁ…って。なんか、名の如くだなって。
普段はぼんやりしてますよ。堤先生に「全体的に不審です」って言われました(笑)。
【矢部】
どういうシチュエーションで「不審です」って言葉が出てくるのですか?(笑)
【田雜先生】
僕もあんまり自覚がないのですけど、学食のメニューの豚しゃぶ定食みたいなものを…見て離れて、また見てって繰り返していたらしいです。あんまり自覚がないです。ただ単に落ち着きがなかっただけだと思います。
【Iさん】
それ意図はあるのですか? 近づいてみたり離れてみたり?
【田雜先生】
えっとね。なんとなく豚しゃぶ美味しそうだな、いやいや、でも今日は食わない、みたいな。それがすごく怪しかったのでしょうね。なんかちょっと佇んで見てらしてね。「全体的に不審です」って。
【矢部】
堤先生にそんなに冷静に言われるとちょっとショックだなぁ(笑)
【田雜先生】
まぁ、よく言われてますよ(笑)。今、僕の研究室ががらんどうなんです。腕を組んで、がらんどうすぎて絶望してたんです。研究室ってみんな住み心地のいい環境ができているじゃないですか? 置きたいものもまるでないし、散らかったままだし。「もういいか」「なんかなぁ」みたいな感じでいたら、その背中を見られて。「すごい背中でしたよ」って(笑)。なんかそんな感じもありました。
【Tさん】
いつも学食でお昼は食べらるのですか?
【田雜先生】
いや、あのね、研究室で食べたりとか、色々してます。まあ色々。学食まだ食べたことないですよ。うん。なんかチャンスがなくて。
【Sさん】
今日見ていたのですか?
【田雜先生】
今日見てた。安っすみたいな。そんな感じですよ、僕の日々(笑)。
面白いネタとか…、インタビューで自分が喋っていくスタイル。インタビューって難しいよね。
『となりのトトロ』でだいたい例え話ができる
【Iさん】
私は初めてのインタビュー。未来研のなんかで、私はタイミング的にやらなかったので、インタビューする側は初めて。される側もそんなに経験がない感じ。
【田雜先生】
来年(3年次)に「コミュニケーションデザインA/B」を履修してください。そこでインタビューのやり方をやります。あれ、本当はインタビューのやり方じゃないのだけどなぁ…。インタビューのやり方、僕も分かりません(笑)。
【矢部】
田雜先生の担当される授業について、「こんな内容の授業がありますよ」というのが、今決まっているものではどんなものがあるのですか?
【田雜先生】
あー。僕の授業を知っている人は知っていることで、僕は『となりのトトロ』の話ばかりしているわけですよ。『となりのトトロ』でだいたい例え話ができるんです。
今「芸術学」という授業で『となりのトトロ』の話をしていまして。あれで何をやっているかというと、美術の「絵解き」ってあるじゃないですか。「絵の中に意味がどんな込められているか?」という話をしている。で、それを先鋭化させて、最終的にね『君たちはどう生きるか』を如何にして観るかというところに行きます。その過程で他の映画にもいくんですよ。遠藤周作の『沈黙』とスコセッシの『サイレンス』を比較しながら見ていくとか。
「芸術学」という講義を受け持ってるのだけど、美術史とかを参照しながら美術的・美学的な見方によって作品を解説していくっていうやり方もあると思う。けど、それ俺がやってもなぁ、と。自分は美学とかそこまで詳しくないのだけど、そういう芸術に関する諸々の理屈を使って、自分だったらどう作るかっていうのはあるわけ。それを自分の作品を題材にしてやるのもいいんだけど、それだと刺さらない。そこで、すでにある名作を使って「自分だったらこう作る」と照らし合わせながら、「これはこういう風にできている」と読み解く。
それで全体的に、西洋美術史とかも全部おさらいしつつ、現代思想とか、宗教の話とか、そういうのも何もかも全部包摂しながら…。例えばアンディ・ウォーホールのポップアートっていうのは、なんで絵の形とか色とかだけじゃなく、そうじゃないものを表現するに至ったかみたいな。そういうところまで大きくお話を広げるっていうのをやっています。
これはなんと演習ではないので、僕がひたすら喋る(笑)。ひたすら喋ります。
【Tさん】
でも面白そうだなって、今話を聞いていて思いました。
【田雜先生】
本当? いいですよ、聞きに来てくれて。1年生でみっちみちですけどね。途中からだとわけがわからなくなるかも…。どこでも喋ります。授業はそんな感じかな。あとはいつも通りの授業ですね。
「デジタルデザイン基礎A」って皆さん受けましたよね? あれ何やったんだっけ。あれは映像と出版の基本か。ああいうのやっています。文字を組んだり。それも僕はグラフィックデザイナーではないので。グラフィックデザイナーは文脈も見るわけだけど、やっぱり色や形の精度みたいなものを追求する。僕は元々が物語とか脚本とかから入っているから、どういう順番で見せていくかをものすごく意識する。だから映画の話をするわけです。映画って全部そういうのが入っている。そこから構図のことをやったり、どういう順番で情報を出していったら見やすいか。それとすごく類似したことが雑誌にもあるよねって。
という授業をやったような記憶があるのですけど、毎年やってるのですけど、やり終わるたび記憶喪失になるんで(笑)。今年も変わらないと思います。多分、どの授業も同じことで喋っている。手を変え品を変えて。
(5/28 公開予定の後編につづきます)
