田雜先生は以前から非常勤で講義を担当されており、「ジブリ映画の話をする、めっちゃ面白い講座」と評判でした。2025年度より常葉大学 造形学部に専任教員として着任されましたので、改めて田雜先生の核心に迫るべく、お話をお聞きしました。後編は「オススメの映画 〜 立場を作って自由に始めよう」です。
(2025年度 常葉大学 造形学部 田雜先生 × 2年生 Iさん・Sさん・Tさん)

インタビュー実施日: 2025年4月23日(水)  at 常葉大学 瀬名キャンパス

オススメの映画は『ラ・ジュテ』

【Sさん】
先生のおすすめの映画って何ですか?

【田雜先生】
おすすめの映画…。あ、えっとね、クリス・マルケルというフランスの写真家が撮っている『ラ・ジュテ』。全編静止画なんですよ。僕の大学院の先生に言わせるとボラギノールのCMみたいな映画って(笑)。あれなんです。すごくいい映画なで、ぜひ見てください。

1950年代の映画。古い白黒の映画です。SFなんですよ。核戦争が起こって、地下世界にしか住めなくなってしまったパリの話です。クソみたいな世の中になってしまったから、何とかするためにタイムマシーン? 過去に記憶を転送する装置みたいなのを作るんです。で、囚人みたいなやつを転送して、核戦争が起こる過去を根絶やしにするっていう話。ありがちな話なのですけど、これがね、実にいい潤いでですね、映画が展開していくのです。フランスの恋愛ドラマですよ。すごくいいです。

で後にですね。ブルース・ウィルス、ブラッド・ピット、マデリーン・ストー主演で、テリー・ギリアムというイギリスの映画監督が『12モンキーズ』っていう映画としてリメイクしています。この映画もいいです。だけど、『ラ・ジュテ』がめちゃくちゃいい。何がいいかっていうと、金がかかってないのね。

【一同】
(笑)

【田雜先生】
あのねぇ、全部静止画だから、まずお金が全然かからないわけ。そこにモノローグがあるだけ。モノローグと効果音と音楽がちょっとあって、実はちょっとだけ動くシーンがあるのだけど、あと全部静止画。パッパッパッとボラギノールみたいに切り替わって。これが30分の映画なんですよ。たった30分。でね、下手な映画より没入感があります。めっちゃ動く映画より、はるかに没入感がある。詩的でね、すごくいいです。もっとも、そんな地味なものがメジャーな映画になり得るか?って、なりえない。ただ『ラ・ジュテ』は、映画史の中では非常に重要な作品だったりします。

これだったら俺にも作れる

【田雜先生】
で、要するに作れるんですよ、いいものは。派手にせんでも。だから、オススメの映画はっていう意味では常葉大学のみなさんにオススメしたいのは『ラ・ジュテ』です。すごくシンプルで、情報も削ぎ落として。撮れるじゃん、みんなにも。だって静止画だけで撮ればいいんだし。しかもフランスの核戦争後の地下世界とか言っても、ただの雑居ビルの地下みたいなところで撮っているんですよ(笑)。うまく照明とかやったら全然いけるんで。それがおすすめ。工夫次第でできるから。なんかうまいことそういうものを引っ張ってきてですね、皆さんなりに金をかけずに熱い作品を作るといいんじゃないかと思って。

僕は『ラ・ジュテ』にものすごく勇気づけられた。映画ってめっちゃ金がかかるのですよ。僕の母校の映像学科で映画監督になった連中とかは漏れなくそうですけど、10分で10万円とか当たり前ですよ、フィルム回したら。信じられないでしょ? 本当にそうなのですよ。めちゃくちゃ金がかかる。まずカメラが高すぎて買えないです。大学から借りるしかない。何千万円とするから。レンズとかもめちゃくちゃ高い。フィルムは10分で10万円とかで、湯水のようにお金が溶けていく。みんな卒業制作するのに200〜300万円バイトして貯めて…。突っ込む。僕、その命がけのダイブはマジで熱いと思っているけど、俺は乗れないなと思ったんですよ

【一同】
(笑)

俺は乗れないなと思って、そのときに『ラ・ジュテ』を見て、これだったら俺にも作れると思って。だからそういうことを今もやっている。僕は写真じゃなくて、ドローイングでやっているだけです。ドローイングでお話を作ることをやっていたら、それを評価してくれる人たちが現れて、それを本にしてみませんかっていう人が現れて、いろんな作家と本を作る機会ができて、なんかいろいろあって、今、常葉大学にいる。

【学生さんたち】
繋がった(笑)

自分の立場を作って勝手にやってみる

【矢部】
こういう話って、ちゃんと聞こうとしないと聞けない。この先生は何が専門か。何をやってきて、どんなことができる先生か、わからないですよね。ちゃんと話をお聞きしたらすごい腹落ちしました。

【田雜先生】
僕とか相当の謎だと思うんですよ。

【矢部】
はい、謎です(笑)。なにせ、学生から聞こえてくるのは「トトロの話」だけなので。「トトロの話をしている先生」「めっちゃ評判がいい」(笑)

【田雜先生】
トトロの話で大体なんとかなるのですよね。トトロがいかに良くできているかっていうことだと思う。まさか『となりのトトロ』でアンディ・ウォーホルを語れるとは…。ビックリしています。なんかまあ、『となりのトトロ』でアンディ・ウォーホルを語っているわけじゃない。適当なことを盛って言いました(笑)。入り口にしているだけです。すぐ盛るんですよ。だから動画とかは本当にやばいんですけど。まあいいかって。すごい適当なこといっています。

質問なにかあります?

【矢部】
2年生の授業はないですか?

【田雜先生】
ないですね。3年生でまた会いましょうって感じです。3年生でやるのは「1年生でやったものの深く掘った」版になります。実は案外同じなのですよ。同じことやるのだけどもうちょっと深く。僕が大学でやったこともそうだけど、結構根っこはシンプルなので。反復しかないですよね。1回やったらもうやらないっていう形は多分違うだろうなって思っていて、勝手に反復しているんですよ。それがこの大学のカリキュラム的にどうなのかは…。拙いのかなまあ(笑)。

結局、僕もまあまあ勝手にやっているわけです…。 …。 勝手にやるといいと思います。

【一同】
(笑)

【田雜先生】
自分の立場を作って勝手にやるといいのじゃないか。というお話だったと思います。周りの目とか気にしなくていいと思います。僕は今そう思ってやっているから。いろいろな見方はあるだろうけど、こう躱しながら(マトリックスのマネ)。自分が面白いと思うことをやっているところがあります。どうやらみんなの受けがいいみたいだから、もうちょっと見逃してもらえかなと期待してやっています(笑)。みなさん、今後ともよろしくお願いします。

【一同】
よろしくお願いいたします。ありがとうございました。